クランクの上死点は真上ではない


今回も「やまめ乗り」の仮説のお話。

クランクの本当の上死点

ペダリングにかける力を解説する際に、ペダルの軌跡(円)を描いて、その真上(A)と真下(A’)を上死点、下死点と説明して、ここでは力を加えても回転力にならないと説明するが、実はこれは間違いだ。

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というのも、サドルに座った人間がペダルを踏むのだから、上死点と、下死点は、シートポスト沿いの地点(B、B’)になる。
つまり自転車におけるクランクは、垂直方向ではなくて、少し後側に傾いて搭載されているということ。

本当に力を加えることができないのは、サドルがシートポストの位置(B)を通過する時であって、垂直方向の真上(A)ではない。
BからAの間は、回転力を加えることが可能なのである。

もちろん、ここで大出力を加えるというわけではなくて、重力に逆らって足をあげる動作をしつつ、素早くAを通過させる予備動作を意識的に行うポイントになる。

「やまめ乗り」の上死点

ここでまた「やまめ乗り」のメリットについて仮説を立ててみたい。

「やまめ乗り」の場合は、さらにサドルを後方に引くので、クランクの上死点がさらに手前(C)に来る。
これによって、予備動作をより早く始められるというメリットが発生する。

ただし、この位置での予備動作は重力は利用できないため、純粋に脚力を使って行う動作で、この部分の脚力を鍛え、予備動作のスキルを向上させられれば、より効率的なペダリングが可能になる。

前にも書いたが、教則本で、ペダルの位置が3時以降で踏んでも推力にならないという説明において、力が地面に突き刺さるからという解説は力学的に間違い。

実際には、通常の乗り方に比べて早くクランクの下死点(C’)を迎えてしまい、3時を過ぎるころには、下死点を迎える予備動作に切り替えるべき…というのが、力学的に正しい説明と考えられる。

少なくとも、AからA’の部分は重力の助けを借りてペダリングを行えるわけで、より早く予備動作を行える「やまめ乗り」は、小出力を効率よく活用するのに向いている乗り方だと考えられる。

ペダリングを力学的に考える

自分は、今のフォームが染みついているし、今から「やまめ乗り」をするコトは無いと思うものの、「やまめ乗り」の教則本を読んで、今のフォームについても力学的に考えるきっかけになったのは興味深い。

正直、教則本の中の説明は非常に感覚的で、力学的に矛盾のある説明がちらほら出てくるところをみると、著者の方は、その部分での知識には乏しいように思われる。

ただし、実際に自転車に乗りこんでの感覚センサーは非常に鋭敏なモノを持っているようで、その身体感覚から「やまめ乗り」を編み出していったのは間違いない。

自分は、その「身体感覚」と「力学的矛盾」のギャップの間から、前回の「ペダル支点」や「クランクの上死点」という仮説を立ててみたが、この仮説は「やまめ乗り」だけでなく、通常の乗り方にしても、同じように役に立つものだと感じてる。

これを実証するのは容易ではないものの、少しでも効率的な乗り方に関して、誰かの説明を鵜呑みにするのではなくて、自分の頭で考えるきっかけになったのはありがたい。

自分に合ったフォームは、自分の身体が知っているのは間違いないが、それを引き出すためには、鋭敏な身体感覚センサーと、それを論理立てて組み立てる思考力が必要になるようだ。

この教則本、もう少し精読してみたい。

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